DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)2020年8月号の特集は『気候変動』。今まで組織の外の課題として扱われていた「環境」が、かなりの程度、組織の課題として見られるようになってきた。どうしてそうなったのか、現在の構図と対応策を今月号から読み解いてみたい。(参考ブログ:https://toshimitsuhara.wordpress.com/ )
当号の『気候変動をイノベーションの機会に変える』を読んでみる。すると、気候変動に関するトピックが「べき論」から「ルール変更のきっかけ」に変わりつつあることが理解できる。新ルールに適応できなければ、取引が円滑に進まない可能性が少しずつ高まっている模様。環境に悪い製品の排除は着実に進んでいる。
取引条件に環境というハードルを追加するよう働き掛けることで、ついてこれない競合他社の競争優位を下げる
特にコスト優位で競争優位性を築いていた発展途上国の企業にはキツい動きだろう。「そこまで対応できない」という意見は、政治的に弱い立場の業界から却下されるのかも知れない。例えば日本では、CO2削減以上に石油加工製品の削減が先行している印象を受ける。声高に反論しづらい所がまた、政治との相性の良さを感じさせる。
ただし、本稿が提案するような、環境に優しい製品の優遇は「提案」している時点で未だ実現していないし、今後も進むとは思えない。
当号の『米国人は気候変動の問題をどうとらえているか』で、著者が、“私が最も恐れるのはライバル企業でしょう。”[p47]と、環境を使った競合からの風評攻撃の強力さを述べている。そして、見せかけの内部化は「グリーンウォッシング」でしかなく、競合からの格好の攻撃対象となることを示している。この記事を世論調査と捉えるか、マーケティングと捉えるか。
当号の『CFOこそ気候変動問題を解決する切り札である』を読んで、気候アクションは信用に近く、通貨というより勘定として扱うと対外的・対内的な説明がしやすいように思われた。
すでに環境という通貨を扱うイメージで話がなされている
本稿の中で紹介されているブラックロック社のラリー・フィンクの言葉として“気候変動リスクは投資リスクである”[p52]が紹介されているが、まさしく為替リスクみたいな扱いとなっている。環境に対する為替レートはどんどん上がっている。(為替レートを上げることで利益を出そうとしているようにも見える。)
当号の『廃棄物削減には業界を超えた協働が欠かせない』では、ループという取り組みが注目に値する。これは一種のプラットフォームであり、このプラットフォーム上にP&G、ユニリーバ、マーズ、ネスレ、ペプシコ、コカ・コーラなど各社が乗っている。日本もイオンが関係しているらしい[p60]。プラットフォーム戦略と気候アクションは相性が良い。
例えば、Appleがゼロエミッションどころかマイナスエミッションを実現して、アプリ提供企業の炭素税の一部負担に乗り出したとする。
すると、Appleは炭素税強化を働きかけることで、間接的にアンドロイド端末メーカー(大手は韓国と中国)を攻撃すると同時に、アプリ提供企業のiOS優先を確固たるものにしようとするだろう。そんな動きを予想させる行動が本稿には書かれていた。
隅 研吾氏へのインタビュー『いまこそ、地球のOSを書き換えよ』を読んで、私なら「負ける建築」「自然な建築」のプラットフォーム化を進めるだろうと考えた。
「負ける建築」「自然な建築」の具体的な規格や、設計のためのツール類を開発して他の建築事務所に提供する。認定制度を用意して「自然な建築認定」を与えることで対象建築のブランド価値向上と環境負荷低減を図る。事務所としてはライセンス収入が見込めるだろう。何より、隅氏がやらなければ他社が類似の活動を行うので「負ける建築」「自然な建築」はアプリに留まってしまう。もしかすると、私が勉強不足なだけで既にそういった活動に取り組まれているのかも知れないが。
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