DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)2020年7月号(以下、今月号)の特集は『リーダーという仕事』。コミュニケーションのあり方が変わろうとしている現状において、自分の関心は「リーダーという仕事は、オンラインで完結できるだろうか」にある。今月号を読みながら、この問いを考えてみたい。(ブログ:https://wp.me/p1ggRB-NO を参照)
リーダーという仕事をオンラインで完結させるには、オンラインで信頼を勝ち取る必要がある。今月号の『リーダーの信頼を支える3つの力』では、リーダーシップを発揮する以前にあなた自身が信頼されなくてはならないと説く。本稿では「オーセンティシティ」「ロジック」そして「共感」の3つに要素を分類して説明している。
「オーセンティシティ」をオンラインで理解してもらう必要がある
以前に直接会って仕事をしたことがある人同士であれば、直接会って何度か話した時の印象などでその人の「オーセンティシティ」はある程度理解出来るように思う。初めから直接会ったことのない状態で、どうやってオーセンティシティを理解してもらうか。考えているうちに、マクルーハンのメディア論を思い出した。マクルーハンによると「ホットな」メディアは視聴者が情報を鵜呑みにしがちとのこと。オンラインにおいては個々もメディアを媒体として理解するのだから、リーダーは自分のプロファイルを「ホット」にして、フォロワーにある意味「鵜呑み」にしてもらう必要があるのかも知れない。
信頼しても良いという「ロジック」を提示する必要がある
信頼に必要な「ロジック」については、これはオンライン/オフライン云々というよりも過去の実績がものを言う。第三者の評判、リファレンス情報なども有効だろう。ここはオンラインでも大丈夫な気がする。小さくても実績を積み重ねることが、信頼してくれるフォロワーを増やす。
メンバーを思いやるための「共感」を示す必要がある
そして信頼に必要な「共感」について。これがオンラインでは難しい。相手から見て、自分か共感を示していることをどうやって確かめるか。共感の有無は言葉以上に非言語な振る舞いや目の動き・表情などによって伝わる部分が大きい。こういった要素を必要とする仕事こそ、人と人がチームを組んで何かを達成する際の醍醐味でもあったりする。しかし、フォロワーの「Be」はオンラインでは掴みにくい。代替手段として、フォロワーの「Do」から文脈を読み取るスキルが問われるようになりそう。オンラインにおいては「Have」すなわち成果だけを見れば良いとする論調も強いが、フォロワーの活動履歴や書き込んだコメントなどから、何に迷っているのか・苦労しているのかを読み取るスキルを磨く必要がありそう。そこに共感を示すことができれば「オンラインでもこの人は私を見てくれている」と思われるのではないか。我が身を振り返れば、面倒臭くてやっていないわけだが。
今月号の『リーダーのコーチング能力を高める方法』にも書かれている。昨今の先行き不透明な状況に応じて、リーダーシップスタイルをコーチング重視に変えるべきと。
「指示型」のコーチはオンラインでもやりやすい
「1.指示型」は、オンラインでもできるだろう。ある種の「型」を提示しそれに従ってもらうというのは定型化しやすくオンラインでも指示しやすい。
「非指示型」のコーチングをオンラインで行うには工夫が必要
「3.非支持型」は投入する情報が少ない一方で相手の能力を引き出すスキルが多く求められることから、オフラインでの経験値なしでこのスキルを磨くのは難しいような気もする。
「非指示型」と「指示形」をうまく組合せてバランスの妙を取ると良い
言うのは簡単でも、実際にバランスを取れるようになるには相当な経験、そして失敗からの学びが必要だろう。
今月号では、オンラインでの意思決定や権限移譲のヒントとなる論文がいくつかあった。
判断力を磨く
今月号の『リーダーは優れた判断力を身につけよ』では判断力を磨くための6つのコツを示している。「学習」「信頼」「経験」「中庸」「選択肢」「遂行」にまとめられた、これらの6つのポイントは、オフラインの方が簡単とは思うが、オンラインであっても実現可能な部分も多い。オンラインコミュニケーションであったりビデオ会議などをうまく使うことで実現可能な要素が揃っており、まさしくオンラインでオンライン化が進む世にあってうまく適応するために求められる要素のようにも思われた。
「余白を作ること」と「問いを重視すること」
今月号の『自律的な強度を促すリーダーシップ』では、判断力と同等かそれ以上にこれからのリーダーに求められる姿勢として、「余白を作ること」と「問いを重視すること」を重要視している。今後、現状課題を克服において、部下を始めとするプロジェクトメンバーやフォロワーに対する自律的な協働が欠かせない場合、リーダーは知的な想像者として、好奇心を持って状況やメンバーと接する必要があると言うのが本稿の主張である。
権限移譲によるシェアード・リーダーシップを進める
シェアード・リーダーシップの実践例とも読める内容が、今月号のソニーの吉田憲一郎さんへのインタビュー『ソニーは、誰のために、何のために存在するのか』に書かれていた。ソニーのパーパスや価値観を明示して、従業員の方向性の一本化を図った後は、各事業の責任者に多くを委ねると言うスタイルをとっている。オンラインで非言語的な情報を知覚することが難しいのであれば、信頼できる人に多くを委ねると言うスタイルと言える。吉田さんはインタビューの中で、自分の限界を組織の限界にしないために、自分が決めるべきこと以外は、経営チームのメンバーや各事業のリーダーに思い切って任せると言うことを推奨している。これは前述のシェアード・リーダーシップの実践例と読める。
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